文字起こしは難しい? それとも簡単? コツはあるの? 資格はいるの? 音声を聞いてテキストへと変換していく文字起こし(テープ起こし)。誰でも簡単にできそうな気がしますが、本当にそうなのでしょうか。
文字起こしが難しいとすれば、その理由はどこにあるのか探ってみました。
文字起こし(テープ起こし)はきつい、大変、難しい?
文字起こしに資格は必要ないというが
文字に起こしは「簡単」か「難しい」か
録音した音声の文字起こしを行う必要が生じた際、業者などに頼まずに自分(自社)でやろうという方は少なくありません。
その理由としては、文字起こしの業者に外注するために、予算を取りづらいという場合もあるでしょう。また、自営業者やプライベートで個人的に文字起こしが必要という方でしたら、費用の問題は企業の方より一層気になるかもしれません。
あるいは、文字起こしなんて音声を聞いて文字入力していくだけだから、そんなの簡単だろう、専門業者に外注するほどのものではないと、高を括っている方もおられるでしょう。
確かに、文字起こしは専門的な知識や高度な技能を必要とするものではなく、その意味では難しいものではないかもしれません。実際、文字起こしを行うのに資格や特別な技能を習得する必要などないです。
じゃあ、文字起こしは誰でも簡単にできるかというと、じつはそうでもないのが現実です。
起こした文書の完成度は結構差がある
文字起こしを自分で行ったことのある人は「できているつもり」という方が案外多いものです。外国語の聞き取りならともかく、日本語を日本人が聞いて文字化するのだから、自分にもできるだろうと思うのは当然かもしれません。
しかし、文字に起こした文章を客観的に見てみると、そのクオリティーは人によってけっこう差が出てしまうものです。
文字起こしの専門オフィスを経営する私は仕事柄、他人が文字起こしした文書をよく見ることがありますが、その出来栄えは本当に十人十色、ピンキリですね。
小学校の教科書を大きな声でゆっくり読んだのを録音した音声でしたら、誰が文字起こししても仕上がりに差は少ないかもしれません。
しかし現実の録音音声は、話の内容も録音状態も話者の話し方も様々です。やはり、誰が文字に起こしても同じ結果というわけにはいきません。
正確な文字起こしが難しい理由
「耳の良さ」には個人差がある
文字起こしした文書のクオリティに差が出る理由の1つには、人が話した言葉を正確に文字化するというのが、意外と難しいという点が挙げられます。
まず、話者がなんと言っているか正確に聞き取る能力が必要です。これは「耳の良さ」になりますが、思いのほか個人差があります。
「聞こえない」ではなく「聞き取れない」
この「耳の良さ」とは、健康診断などで検査する聴力とは違います。「聞こえる」「聞こえない」ではなく、言葉を正確に「聞き取れる」「聞き取れない」ということです。
学生時代、外国語の授業でリスニングが得意な人とそうでない人がいなかったでしょうか。これと同じように日本語においても、聞き取り能力に個人差があるということです。
もちろん、器質的に聴力に問題があれば文字起こしの作業にも影響するでしょうが、健康診断などで異常のないレベルであれば文字起こしするには十分です。
文字起こしは国語力・語彙力も影響する
さらに、話し言葉を適切に文章にするのは、国語力や語彙力も必要になります。よく聞き取れない言葉でも、話の文脈から「こう言っているんだろう」と類推できることもありますが、そのためには多くの音声を文字起こししてきた経験・コツや、作業者の国語力・語彙力がものを言います。
また、作業者がよく知っている分野の話というのは、やはり文字化の精度が高まります。たとえば、野球にまったく興味のない作業者がプロ野球選手の話を起こすより、子供のころから野球を観たり自分でやったりしてきた作業者のほうが、より正確に文字起こしを行うことができます。
文字起こし初心者を採用しない理由
当事務所では、ときどき文字起こしの作業者を募集することがありますが、経験者に限っています。
というのも、未経験者や初心者が起こした文章ではクオリティが低くて、プロの仕事としては使いものにならないことが多いためです。
もちろん、なかには経験が浅くても文字起こしを上手く行える人もいますが、やはり確率的には、そういう方と出会うことは少ないです。
文字起こし作業に対する適性も重要
長時間の入力作業に耐えられるか
もう1つ、まったく別の視点からみた、文字起こしの難しさがあります。それは、文字起こしの作業に対する適性の問題です。
録音した音声を文字に起こす作業は、音声内容、録音状態、作業者のタイピング能力にもよりますが、たとえば1時間の録音音声を起こすのに、初心者ですと6~8時間くらいはかかります。
文字起こしを行ってみるとわかりますが、6~8時間もの長時間、ひたすら音声を聞きながら文字入力を続ける作業は、慣れていない方にとってはかなりきついです。集中力もいりますし、身体的には座ったまま文字入力し続けますから、なかなか忍耐力がいります。
録音時間が2時間、3時間と増えれば、文字起こしの作業時間もそれに比例して2倍、3倍とふえていきますから、作業していても「まだ終わらないのか・・・」と気が遠くなってきます。
こんな方はプロに依頼したほうが無難
当事務所に文字起こしを依頼されてこられる方のなかには、「途中まで自分でやったけれど、こんなに大変だとは思わなかった」と言って、挫折したので後は頼むという方もときどきおられます。
特に、日頃から長時間の事務的な業務に携わっていない方、タイピングが苦手な方、忙しくてまとまった文字起こしの作業時間が確保できそうもない方は、ご自身で行うのはやめておいたほうが無難です。
自分には無理そうかなと思ったら、文字起こしの専門業者やライターがいますので、プロに頼んだほうがよいでしょう。もちろん、当事務所でも録音音声の文字起こしをお受けしておりますので、ご用命がありましたらいつでもお気軽にお問合せください。
音声認識ソフトでのテキスト化について
文字起こしを自動で行えるというが…
また、近年は音声認識技術によって、自動で音声をテキスト化、つまり文字起こしを行ってくれるソフトやアプリも開発が進んでいます。
ただ、音声入力時の条件が整っていないと実用には使えなかったり、録音した音声だと正確にテキスト変換できなかったり、パソコン初心者には意外と使用が難しかったりすることもあります。
音声認識技術の進歩は近年著しいですし、お時間やご関心があれば試してみてもいいと思います。しかし、頻繁に文字起こしする必要がない方、忙しい方、パソコンはあまり得意ではない方は、文字起こしの専門業者に依頼したほうがよいでしょう。